3人目のチーフ

映画、演劇、本エトセトラ。アラサーOLケイの日常をちょっと離れて。

ナショナルシアターライブ「War Horse」

ども謎の外国人にカフェでオペラに誘われたケイです。頭をよぎるカナダの事件。ちなみに駅でもよく手相を聞かれる。断れないオーラがダダ漏れまくっている。つらい。

 

邦題「戦火の馬」。トニー賞受賞式で作品賞を取っていたり、司会ニールパトリックハリスが馬の真似をしばしばしたりしているのを見てぜひ行きたかった作品。

 

ナショナルシアターライブは、イギリスのロイヤルナショナルシアターの演劇を映像で観ることができる今流行りのライブビューイング。

TOHOシネマズなど、一部映画館で各作品1日1回概ね1週間ほど上映。3,000円。映画が開始してからさらにガヤガヤする謎の待ち時間に大いにイラっとする仕様以外は、シェイクスピアの国イギリスの翻訳付き生舞台をお得に観ることができる素晴らしい取り組みです。

なぜ、映画開始前にガヤガヤを流さないのか。なぜ沈黙でイギリス人の開始前のガヤガヤを観るのか。今日はスピルバーグが映画化したこともあり初見の人も多そうな満席具合だったから、繰り返すガヤと宣伝にあれ?バグかな?みたいな変な空気になっていたし。

 

ウォー・ホース ~戦火の馬~(せんかのうま、War Horse) または軍馬ジョーイは、1982年に出版されたマイケル・モーパーゴ(英語版)による児童小説をニック・スタフォード(英語版)の脚色により舞台化した演劇。(以上ウィキペディアより)

 

感想は…思ったより断然馬が主人公だった!原作は馬視点の正真正銘馬視点との解説に納得。

 

農耕馬とサラブレッドの子である馬ジョーイが子馬のシーンから始まり、農夫アルバートとの絆を深め軍に徴発されるまでの前半、戦闘に駆り出され同じく軍馬のトップソーンとともに軍馬として辛酸を舐めてアルバートの元に戻るまでを描いた後半に別れる。

 

見どころはなんといっても馬!生きているみたいな呼吸、いななき、耳や尻尾の動作。3人がかりで操るペーパーパペットというか模型。3人というと文楽を想起させるけど、馬の鳴き声や鼻息、表情を表現したりとパペッターが前面に出てくるのが本作の特徴。

まさに劇場でないと出来ない表現に鳥肌だし、馬対馬など人が全くでてこない生き物表現なのにあんなに緊迫して。

ストーリーはみんなバタバタ死んでいるのに主人公馬無双などややご都合主義かつ、長い軍記物をきゅっとまとめた感は否めないが余りある馬の感動よ。

主人公が口笛で馬ジョーイを呼ぶようにしつける冒頭のシーンがあり、その時点で絶対最後の再会はこの口笛だよ嗚呼……と、ジョーイが子馬だけど開始10分だけどすでに胸がいっぱい。

やっぱり口笛で再会なのだけど、ジョーイとアルバートのきずなには胸打たれたし、私の隣の席の同じくソロで観に来ていたお姉さんも号泣。

 

そうなんだよね。ジョーイは軍馬だけどきっとそれだけでは無くて、自分が追い求めていた、夢だったり、なりたかった自分だったり、昔夢中になった趣味だったり、自己実現を果たせた仕事だったり、それでもまた失ってしまった手に入らなかった何かを想起させる。その距離感がパペットだからこそなさる技なのだろう。

失ってでもすがったものが帰って来て、それが生き物との熱い絆とともに胸に去来する感じ。

あっさり終わるだけに、最後はすぐには立てないような余韻が残る舞台だった。